なにものでもない。

まずはバリケードで封鎖されている場所を乗り越えて、ブルースに耳を傾けようとしました。けど耳を傾けようとしたら私に腕にハンカチを巻こうとして押さえつけようとする人間が現れたのです。それが有名なバラバラ殺人事件を犯したバス運転手だったのです。バス運転手は刑務所から逃走してきたようで、私を人質にしようとしていたようです。

ちょっとまってくれ。おれはブルースを聞きたいんだ。何を言っているんだ。お前はもう人質なんだぞ。警察のサイレンが遠くから聞こえてきました。あのサイレンの音はまるで私の内蔵を突き刺すかのように強いけたたましい音を立てながら近づいてきたのでした。手をあげろ。と警察が言いました。しかしなぜか中国なまりのように聞こえました。私はニーハオと言いました。リオ五輪で楽しんでいる時にそんなことをしてもいいのか、お前の母が泣いているぞ。と警察が言いました。

リオ五輪は開会式が面白かったよな。あの人がびょーんとなって、びょーんとなるところ。そんなところはないぞ、お前は頭がオカシイなと警察が言った瞬間、犯人は銃を打ちました。その瞬間全ての時間がとまり、動けるのは私だけになりました。私は銃の弾丸を指でとってこれをどこに向けたら良いかと考えました。犯人だろうか?死刑になるであろうこの犯人だろうか?

それとも横に生えている木に向けるべきだろうか。それとも遠いところにおいてきた私の思い出に打ち込むべきだろうか。そこまで考えてふとキーボードについて考えたのです。なぜかなと考えたら、この銃を「木」に向けるべきだと、考えてその後に「打ち込む」という言葉が出てきたからでした。私は今はなにものでもない。なにものでもないということがわかっている以上はなにものでもない。

そして私はわたしがもっていたノートパソコンのキーボードに向けて、銃弾を撃ち放ちました。